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第4回 宅配ボックス

コロナ禍におけるアクセシブルな製品・サービス

 [オンラインイベント「福祉機器Web2020」における特別企画によせて]
 新型コロナウィルスの感染拡大は、日本を含む世界中の「人たち」に生活様式の変更を迫り、それに伴い製品、サービス、システムも変更が必要になっています。
 世界中の「人たち」には、国際福祉機器展H.C.R.で紹介される製品やサービスなどの対象者である高齢者・障害のある人たちも当然含まれています。けれども、製品・サービス・システムがコロナ禍で変更される際に、高齢者・障害のある人たちを考慮した配慮は、なされない場合が多く見受けられます。また、高齢者・障害のある人たちへの配慮がされた製品・サービスも、当事者や関係者に情報として届いていない場合も多く見受けられます。
 コロナ禍で国際福祉機器展H.C.R.は本年、中止となってしまいましたが、今般、その主催者である一般財団法人 保健福祉広報協会が運営するH.C.R.Webサイトで開催されるオンラインイベント「福祉機器Web2020」において、「コロナ禍におけるアクセシブルな製品・サービス」の特別企画コーナーを設置することとなりました。本コーナーでは、毎回、さまざまなテーマを設け、紹介していきます。

[1]普及の背景

 共働き家庭の増加、ネット販売の急速な普及に伴い、宅配については、その数、種類、量が増えていました。新型コロナウィルスの感染拡大は、今まで利用していなかった家庭も利用を始め、今まで利用していた家庭はさらに利用が加速されました。
 コロナ禍では、人との接触をなるべく避けるようにと、店のレジ前では一定の間隔を置いて並ぶ、映画館や外食でも席は一つ以上開けて座るなどの対応が日常になってくるなか、荷物の受けとりも、極力、配達する人と接触しないで受け取ることが望まれました。コロナ禍以前も、あらかじめご指定した場所(玄関前、置き配バッグ、宅配ボックス、車庫、物置など)に非対面で荷物などを届ける「置き配」という仕組みがありましたが、主に受取人が不在の時に利用するサービスでした。
 ところが、コロナ禍ではインターホンが鳴り在宅している人が受話器をとり、宅配の人が来たことがわかると、「玄関前に置いておいてください」と返事をし、それに対して「わかりました。玄関前に置いておきます」が、日常会話になってきています。
 不在、在宅どちらの場合も、郵便受けに入る大きさであれば、そこに入れることで安全に保管することができますが、郵便受けに入らない大きさのものを、玄関前にいつまでも置いておくことは破損や盗難などの事故に巻き込まれる危険性があります。
 そこで登場したのが、宅配ボックスです。初めは、家を不在にしがちな人たちへのニーズに応えて新築のマンションに設置されました。宅配ボックスは、居住者の替わりに荷物を受け取ってくれるロッカー型設備です。宅配ボックスがあれば再配達依頼のわずらわしさや在宅時間の制約から開放されるため、ネットショッピング時代のヒット商品となりました。当初はマンション設備として導入されましたが、その後、戸建て住宅にも急速に普及が進んでいきました。

[1]さまざまな種類

 宅配ボックスというと、オートロック式のセキュリティがしっかりした入口があり、鍵も電子式でかけられ、安全に保管される専用の場所があるタイプを想像しがちです。実際に、東京のマンションでは2018年時点で、1年未満に建てられたところには70%以上に設置されているものの、20年~30年前に建てられたものでは約10%の設置に留まっています。
 そのため、宅配ボックスはさまざまな状況やニーズに合わせ、さまざまなタイプが開発されています。そのタイプは大きく2種類にわかれます。一つは据え置きタイプ、もう一つは移動させることができるタイプです。移動させることができるタイプは、折り畳むことができるタイプ、下部にキャスターが付き、移動が楽なタイプなどがあります。移動させるタイプは、不在時のまたは、在宅でも接触をさけるために宅配が来る時間帯のみに置いておくことができ、専用のスペースを確保しなくてもよいという利点があります。けれども、電子的な仕組みと異なり、蓋の開け閉めに鍵をかけることはできないため、セキュリティの面で不安がある場合には使用することはできません。
 次に紹介するのは、玄関先に据え置き式のものですが、ボックスの下に高さを5段階で調整する足が付いているものがあります。これであれば、車いすを使用している人にも取り出すやすい高さに設定することができます。さらに、中が空の時には鍵をかけずにおき、宅配の人が中に宅配物を入れ、中扉にあるボタンを押して閉めると鍵がかかり、所有者が持っている鍵でしか扉が開かなくなるためセキュリティの問題は解決します。
 一方、デジタルタイプのものは、宅配されたものが入ったボックスの扉を、受け取る人が開けるためにいくつかの種類があります。10(テン)キーに暗唱番号を入れるタイプは、それぞれの数字がプッシュホン電話のようにボタン式になっていて、5番に小さな凸点が付いているタイプは、視覚に障害のある人にも操作することができますが、10(テン)キーが液晶表示になっているものは、操作することが困難です。
 コロナ禍の中では、多くの人が必要とする宅配ボックスは、障害のある人それぞれが使用できる製品がアナログ的工夫とデジタルの工夫が、連携しながら存在し続け、しかもどれが自分に適しているかを選択できる仕組みができることが望まれると、改めて思った次第です。

 

脚付き宅配ボックスのイメージ