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04.オンラインを活用した面会や見学対応の実施

レポート - 国際福祉機器展

福祉施設・事業所における 新型コロナウイルス感染防止のための取り組み

新型コロナウイルスによる影響のため、福祉施設・事業所においても利用者への安全で安心な支援体制が確保できるよう、さまざまな取り組みが続けられています。そうした福祉現場の現状と絶え間ない生活の営みを支える取り組み、感染防止のための工夫例をご紹介します。

本レポートでは、群馬県渋川市にある社会福祉法人 誠光会(せいこうかい/理事長 佐鳥夏子氏)の障害者支援施設「誠光荘」が取り組む、オンラインを活用した面会・施設見学対応などの事例を紹介する。誠光荘では新型コロナウイルスによる緊急事態宣言が解除された6月下旬頃より、オンラインによる面会を導入した。同施設では、重度の障害のある人を含め、年代問わず幅広く受けいれをおこなっている。

[1]オンライン面会の実施

 誠光荘では、新型コロナ禍の影響により対面での面会を中止。利用者に会いたい、様子が知りたいといった利用者家族からの希望に応え、Web会議システムを利用したオンライン面会を導入した。
 オンライン面会の実施にあたっては、PCやタブレットなどの媒体に加え、近距離無線通信ができるマイクスピーカーを導入したことで、お互いの声が聞き取りやすい環境づくりを行った。
 また、利用者家族が同施設に来館し、施設内の離れた場所で行う面会と、利用者家族が自宅から施設にWebでつなぐという面会、それぞれの場合に柔軟に対応している。実施は以下のような方法で行っているという。

◆利用者家族が施設に来館してのオンライン面会

 施設内の会議室に利用者と施設職員1名、施設正面玄関に利用者家族が待機。パソコン同士をインターネットへつなぎ、Zoom(Web会議システム)を使用し、面会を行う。セッティングはすべて施設職員が行うため、面会者は操作などが分からなくとも、簡単に話すことができる。何か不具合が起きたとしても、すぐに施設職員が対応できる状態であることが、この方法の利点である。

◆利用者家族の自宅から施設に接続してのオンライン面会

 利用者家族へWeb会議システム接続の案内メールを送り、利用者家族は自宅のパソコンなどからシステムに接続していただき、施設とつなげる。システムの操作に慣れていない利用者家族へは、事前にWeb会議システムを利用する際のマニュアルを送付し、読んでいただくといった対応を行った。
 新型コロナ禍で面会が不可となった当初は、電話での面会対応を行っていたが、言語障害のある利用者の場合、電話では家族に反応がほとんど伝わらなかった。うなずきなどで利用者が反応している様子が、電話では利用者家族に伝わらないという状況があり、その後、オンライン面会を導入したところ、視覚的な情報が増えたことで、利用者の表情やしぐさ、変化などの動きが利用者家族に伝わり、利用者とその家族の双方が喜ぶ姿がみられたという。

面会用パソコンとマイクスピーカー

[2]施設内のオンライン見学

 誠光荘では、新規入所者や短期入居者希望者のために、オンラインでの施設内見学を行った。
 方法としては、Zoomで入所希望者と映像をつなぎ、施設職員がタブレットをもって、正面玄関や食堂、訓練室、各部屋などポイントとなる場所を説明しながら施設内を映し紹介していく、というものだ。誠光荘は、車いす利用者同士がすれ違う際や、ベッドの移動時でも余裕のある廊下の幅を設けるなど、重度の障害がある人にも過ごしやすいつくりをしている施設であるが、そうした点もリアルタイムで随時入所希望者に説明しながら実施した。オンライン見学を実施するにあたっては、広い施設内で通信環境を整える必要があったが、企業の協力によって試験的にではあるがWi-Fi中継器を導入し、環境整備ができた。
 今後は利用者向けだけでなく、職員採用や学生に向けても実施することを想定している。

タブレットを使用した施設見学

[3]入所希望者にオンライン面談

 施設への入所希望者に対して、面談を実施する際にも、新型コロナ禍で対面による実施が難しい状況になっている。
 誠光荘では、双方が安心できる環境で行うために、こうした面談もオンラインを活用して実施している。実施方法としては、入所希望者がいる病院または自宅と施設とをWeb会議システムでつなぐというものである。
 入所希望者への面談のオンライン利用は、想定していたより大きいメリットが生じたという。それは、面談に参加できる職員の増加である。通常、施設職員が利用者の自宅、あるいは病院へ出向き面談を行うが、その場合施設から訪問できる人数は2~3人と限られていた。しかし、オンラインの利用により、施設内で面談に参加できることから、通常では施設を離れることが難しい職員も参加することが可能になった。過去の事例では、看護師やリハビリの専門職を交え、合わせて6人が参加。さらに、利用者側の看護師やリハビリの専門職も3名参加し、過去にない人数での面談ができたという。さまざまな立場からの目線で意見が交わされることで、入所希望者を多方面からフォローできたということだ。

オンライン面談の様子

[4]職員間でのオンライン利用

 誠光荘では、Web会議システムを利用した職員間のオンライン会議を実施。施設内の職員と、自宅にいる職員双方をつなぎ開催している。
 職員からは、安心して会議に参加できるといった声があがったが、一方で複数人のオンライン会議は発言がしにくくなるといったデメリットも感じられた。そうしたデメリットに関しては、回数を重ねることで改善を目指している。