福祉用具・補装具等の利用について(印刷用PDF)[4.2MB]
福祉用具・補装具等の利用について
I 福祉用具・補装具等の利用にあたって
高齢者や障害者が自立した生活を送る上で、福祉用具や補装具等は欠かせないものとなっています。利用する方も増え、広く普及してきましたが、一方で不適切な福祉用具・補装具等の使用は逆に身体機能が低下する危険性もあります。自らの判断で安易に使用しようとせず、専門家に相談しながら適切な福祉用具・補装具等を選択することが重要です。
すでに「介護保険制度」を利用されている方は、(介護予防)福祉用具貸与(購入)を受けられる場合がありますので、担当の介護支援専門員 (ケアマネージャー) 等に相談してください。また、障害者手帳の交付を受けている方は「補装具費の支給」 や「日常生活用具の給付又は貸与」 が受けられる場合がありますので、居住する市町村の障害福祉の窓口に相談してください。
また、H.C.R.Web サイト に掲載の「常設展示場」ページでは、専門家への相談や実際に試乗・ 試用ができる場所を検索することができます。
Ⅱ 福祉用具の制度面での位置づけについて
福祉用具は、「介護保険法における(介護予防)福祉用具貸与費、特定(介護予防)福祉用具購入費として保険給付される場合」、「障害者総合支援法における補装具費として支給される場合、日常生活用具として給付又は貸与される場合」に大きく二つ分かれます。それぞれがどのように適用されるかは次のとおりとなっています。
(1) 介護保険法における福祉用具と障害者総合支援法における補装具・日常生活用具
介護保険の要介護者または要支援者は介護保険法における福祉用具を、身体障害者手帳を持っている方は障害者総合支援法における補装具・日常生活用具を利用することができます(一定の要件あり)。
また、日用生活用具は地域生活支援事業に位置づけられ、地域の実情に合わせて、市町村が給付対象種目や基準額、対象者等を定めています。
なお、介護保険で貸与される福祉用具には、一部、補装具と同じ製品(車いす、歩行器、歩行補助つえ ) が含まれています。介護保険の要介護者または要支援者であり、身体障害者手帳を持っている方がこれらの製品を利用するときには、標準的な既製品で対応できる場合は介護保険法に基づき貸与され、市町村が、身体障害者更生相談所等の判定・意見を踏まえ、障害者の身体状況に合わせて個別に対応することが必要と判断した場合には、障害者総合支援法 に基づく補装具費として支給されます(一定の要件あり)。
Ⅲ 介護保険法における福祉用具の利用について
介護保険で福祉用具を利用する場合、利用者は市町村が行う要介護認定を受ける必要があります。要介護認定結果は、大きく分けて「要介護者:要介護度区分において要介護 1~5 に属する者」、「要支援者:要介護度区分において要支援 1・要支援 2 に属する者」に分けられます。介護保険における福祉用具の利用方法には貸与と購入があり、それぞれ手続きが異なります。
(1)介護保険法における福祉用具の定義
心身の機能が低下し日常生活を営むのに支障がある要介護者等の日常生活上の便宜を図るための用具及び要介護者等の機能訓練のための用具であって、要介護者等の日常生活の自立を助けるためのものをいう。
(2)貸与の場合
介護保険における福祉用具の貸与の場合は、要介護度別に定められた限度額の範囲内で福祉用具を利用することができます。
利用にあたっては、介護支援専門員(ケアマネジャー)等が、都道府県等の指定を受けた指定福祉用具貸与事業所もしくは指定介護予防福祉用具貸与事業所の福祉用具専門相談員等と以下の手続きを踏まえ、ケアプランに必要性を位置づけることによって福祉用具が貸与されます。
〈貸与の場合の手続きの流れ〉
1)要介護認定を受けた者が、在宅で介護サービスを利用するため、ケアプランの作成を介護支援専門員等へ依頼する。
2)介護支援専門員等によるアセスメント(健康状態、日常生活動作、家族の状態等の評価等)により問題の特定、ニーズの把握をする。
3)サービス担当者会議(各サービス提供者、利用者、家族の参加による意見交換等)を開催して、「福祉用具の利用がその利用者にとって日常生活上の利便性の向上を図るため、もしくは機能訓練のために真に必要である」との同意を得て、ケアプランに福祉用具貸与を位置づける(真に必要な品目の選定については、介護支援専門員を中心に身体機能をよく知るリハビリテーションセラピスト(作業療法士(OT)・理学療法士(PT)) や日常生活動作能力をよく知る介護専門職(介護福祉士・ヘルパー等)及び福祉用具に精通している福祉用具専門相談員等とサービス担当者会議において協議されます)。
4)ケアプランに福祉用具貸与を位置づける。ケアプランに基づき、福祉用具専門相談員が福祉用具サービス計画を作成し、同意のうえ利用者と指定福祉用具貸与事業所との間で福祉用具の貸与契約を結ぶ。
5)福祉用具が利用者に貸与される。
利用者は、毎月福祉用具貸与に要する額の1割相当額(原則)を貸与事業所に支払うこととなります(残りの9割相当額(原則)は各都道府県の国民健康保険団体連合会から貸与事業所に支払われることとなります)(図6参照) 。
なお、要支援 1、2 及び要介護1の者(軽度者の方)については、その状態像からは利用が想定しにくい車いす等の種目について原則として貸与の対象外とされています。
しかしながら、福祉用具を必要とする状態であることが、①直近の介護認定調査(基本調査)結果をもとに判断された場合、②認定調査結果がない場合でも適切なケアマネジメントにより判断された場合は、例外的に貸与することができます (図7、図8参照) 。
また、上記の結果に関わらず、疾病などの要因により、例外的に貸与することが可能な場合もあります。
■ 福祉用具のうち、車いす、特殊寝台(介護ベッド)、床ずれ防止用具、体位変換器、認知症老人徘徊感知機器、移動用リフト(つり具の部分を除く) 及び自動排泄処理装置(尿のみを自動的に吸引する機能のものを除く)については、軽度者の方(要支援者・要介護1)は、原則として介護保険での保険給付は行われません。また自動排泄処理装置(尿のみを自動的に吸引する機能のものを除く)については、要介護者1の者に加え、要介護2及び要介護3の者に対しては、原則として介護保険での保険給付は行われません。
■ ただし、福祉用具を必要とする状態であると特に判断された場合については、介護保険での保険給付を受けることが可能です(図7太枠参照)。
(3)購入の場合
介護保険における福祉用具の購入の場合は、福祉用具専門相談員が作成する福祉用具サービス計画に基づき介護保険の対象となる福祉用具(図 9 参照)の中から必要な福祉用具を選択し、指定事業者(指定特定福祉用具販売事業所もしくは指定特定介護予防福祉用具販売事業所)から直接購入することとなります。したがって、商品と引き換えに代金を全額支払うこととなります。その後、代金(購入に要した費用)の 9 割相当額(原則)については市町村に請求し、支給を受けます(図 10 参照)。
ただし、福祉用具購入費の限度額は 1 年度間で 10 万円ですので、限度額以上の商品(品目数は問いません)の購入を希望する場合は、自己負担となります。
福祉用具購入費の支給にあたっては、申請書等を提出する必要があります。支給申請に必要な書類は次のとおりです。
【必要な書類】①支給申請書 ②領収書 ③福祉用具の概要が記載された書面(パンフレット等)
(4)住宅改修の場合
介護保険では、在宅における高齢者の自立を支援する観点から、福祉用具の導入の際に必要となる段差の解消や手すりの設置などの住宅改修(図 11 参照)も給付の対象としています。ただし、住宅改修費の限度額は 20 万円(保険給付の額は 18 万円(原則))までとなりますので、限度額以上の工事を行う場合は、自己負担となります。
住宅改修についても、福祉用具の購入の場合と同様に、工事代金を施工業者に全額支払うこととなり、その後に代金の 9 割~7割相当額(原則)を市町村に請求し、支給を受けます。(図 12 参照)
改修工事を行うにあたっては、事前・事後に申請書等を市町村に提出し、介護保険給付の対象となる住宅改修工事として認められる必要があります。申請等に必要な書類は以下のとおりです。
【事前提出が必要な書類】
①申請書、見積書 ②住宅改修が必要な理由書 ③住宅改修予定の状態が確認できるもの
【事後報告に必要な書類】
①住宅改修に要した費用、その着工及び完成日がわかるもの ②領収証 ③完了後の状態を確認できる書類等 ④住宅の所有者の承諾書(被保険者と住宅の所有者が異なる場合のみ)
Ⅳ 障害者総合支援法の概要
「補装具費の支給」と「日常生活用具の給付又は貸与」については、「障害者総合支援法」に位置づけられています。
(1)障害者総合支援法による支援の概要
障害者総合支援法により提供されるサービスの概要は、自立支援給付(介護給付・訓練等給付・自立支援医療・補装具等)と地域生活支援事業(相談支援事業など地域の実情に応じて都道府県及び市町村の行う事業等)等により構成されています。
(2)利用者負担(図14参照)
①利用者負担額
利用者負担額は原則として1 割ですが、利用者の家計の負担能力その他の事情を考慮して減免されます。また、生活保護世帯、低所得世帯の自己負担上限月額は 0 円となっています。
なお、日常生活用具給付等事業など地域生活支援事業におけるサービス利用料等は、市町村がそれぞれ独自に設定しています。
②利用者負担額の上限額(障害福祉サービスの場合)
障害福祉サービスの定率負担は、所得に応じて 4 区分の負担上限月額(図15)が設定され、ひと月に利用したサービス量に関わらず、それ以上の負担は生じません。所得を判断する際の世帯の範囲は図16のとおりです。
Ⅴ 補装具費支給制度について
(1)補装具費支給制度の概要
① 目的・・・障害者が日常生活を送る上で必要な移動等の確保や、就労場面における効率の向上を図ること、障害児が将来、社会人として独立自活するための素地を育成助長すること
② 実施主体・・・市町村
③ 対象者・・・補装具を必要とする障害者、障害児、難病患者等(政令に定める疾病に限る)
■補装具の購入、借受け又は修理(以下、「購入等」という)に係る当事者間の契約制を導入することにより、利用者と事業者との対等な関係によるサービスが受けられるような仕組みとなっています。
■利用者の申請に基づき、補装具の購入等が必要と認められたときは、市町村がその費用の一部を補装具費として利用者に支給するものです (※利用者の費用負担が一時的であっても大きくならないよう、代理受領方式も可能) 。
■なお、補装具以外にも、同一世帯の中で障害福祉サービス等による給付を受けている場合、それらの利用者負担額の合計額が一定の額を超えるときは、さらに利用者の負担が軽減されます (高額障害福祉サービス費による減免) 。
(2)補装具の定義
障害者総合支援法では、「補装具とは、障害者等の身体機能を補完し、又は代替し、かつ、長期間にわたり継続して使用されるものその他の厚生労働省令で定める基準に該当するものとして、義肢、装具、車いすその他の厚生労働大臣が定めるもの」と規定されており、次の3つの基準のいずれにも該当するものとされています。
① 障害者等の身体機能を補完し、又は代替し、かつ、その身体への適合を図るように製作されたものであること。
② 障害者等の身体に装着することにより、その日常生活において又は就労若しくは就学のために、同一の製品につき長期間にわたり継続して使用されるものであること。
③ 医師等による専門的な知識に基づく意見又は診断に基づき使用されることが必要とされるものであること。
【告示で規定されている種目】
身体障害者・身体障害児共通・・・義肢 装具 座位保持装置 盲人安全つえ 義眼、眼鏡 補聴器 車椅子 電動車椅子 歩行器 歩行補助つえ(T字状・棒状のものを除く) 重度障害者用意思伝達装置
身体障害児のみ・・・座位保持椅子 起立保持具 頭部保持具 排便補助具
(3)補装具費支給制度の利用者負担の上限
補装具費支給制度の利用者負担の上限月額は図17、所得を判断する際の世帯の範囲は図18のとおりです。なお、障害者福祉サービスと介護保険法に基づく在宅サービス等に係る利用負担を合算したうえで軽減が図られます。
また、こうした負担軽減措置を講じても、定率負担をすることにより生活保護の対象となる場合には、生活保護の対象とならない額まで定率負担の負担上限月額を引き下げます。
なお、世帯の範囲に市町村民税所得割額が46万円以上の方がいる場合は、補装具費の支給対象外となります。
(4)補装具費支給事務の流れ(図19参照)
① 利用者は、補装具費支給医師意見書等の必要書類を添えて、市町村に補装具費支給の申請を行います。
※併せて、低所得世帯の場合には、利用者負担額の減免申請を行うこともできます。
② 市町村は、身体障害者更生相談所等の判定・意見を基に、補装具費の支給が適当であると認めた場合は利用者に対して補装具費の支給決定を行います。
※併せて、利用者負担の減免対象者には減免認定を行います。
③ 利用者は市町村から補装具費の支給決定を受けた後、補装具業者と補装具の購入等について契約を結びます。
④ 補装具業者は、契約に基づき補装具の製作、貸付け、修理を行います。
⑤ 市町村は、引渡しに先立ち、支給決定した補装具が申請者に適合しているかどうかの確認(適合判定)を行います。
⑥ 補装具業者は、申請者に補装具を引き渡します。
⑦ 利用者は、補装具業者から補装具の引渡しを受け、購入等に要した費用の全額を補装具業者に支払います。
⑧ 利用者は、市町村に補装具費を請求します。
⑨ 市町村は、利用者からの請求により、補装具費(基準額から自己負担額を控除した額)を支給します。
※別途市町村で設ける代理受領方式による仕組みにより、申請者は補装具業者に対して自己負担分のみを支払い、 残額は補装具業者からの申請により支給する対応も可能です。
Ⅵ 日常生活用具給付等事業について
(1)日常生活用具給付等事業の概要
地域生活支援事業の一つである日常生活用具給付等事業は、市町村の必須事業に位置づけられ、実施主体である各市町村が自ら創意工夫し、障害のある方のニーズ等を踏まえ、地域の実情に応じて柔軟な形態で効果的な事業展開が可能な制度となっています。事業の実施にあたっては、厚生労働省が告示により要件、用途並びに形状を規定し、実施主体である市町村が、他の障害、製品とのバランスや必要性などを勘案し、地域の実情に応じて、具体的な品目や給付上限額、対象とする障害の現症等の詳細を定めています。
①対象者…身体障害者(児)、知的障害者(児)、精神障害者、難病患者等であって、日常生活用具を必要とする方
②実施主体…市町村
③対象種目…次の 3つの「用具の要件」をすべて満たし、6つの「用具の用途及び形状」(図20)のいずれかに該当する、市町村が定めた用具
【用具の要件】
(ア)障害者等が安全かつ容易に使用できるもので、実用性が認められるもの。
(イ)障害者等の日常生活上の困難を改善し、自立を支援し、かつ、社会参加を促進すると認められるもの。
(ウ)用具の製作、改良又は開発にあたって障害に関する専門的な知識や技術を要するもので、日常生活品として一般的に普及していないもの。