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福祉施設の実践事例

実践事例 詳細

地域特性を活かした地域貢献

種別障害者施設
開催年2016
テーマ地域公益事業
地域貢献
地域特性を活かした地域貢献

社会福祉法人信和会

地域の理解に感謝を示す奉仕活動

私どもの法人は、山梨県韮崎市穴山町を中心に事業を展開しています。市の人口は約32,000人、世帯数は約12,000世帯の小さな地域です。ここで、昭和61年に精神薄弱者更生施設を開設したのが私の父です。
当時はまだ、一般的に障害に対する認識が広まっていない時代ですが、韮崎市はかねてより理解のある地域でした。施設開設にあたり、地域から反対や要望は特に出なかったように記憶しています。
父は、そのことに感謝しなければならないと考え、施設開設当初から、利用者とともに地域の奉仕活動に取り組みました。
まず行ったのが、施設から1.5kmくらいのところにある無人駅、JR中央本線「穴山駅」の清掃活動です。毎週土曜日のこの清掃活動を30年間ずっと継続していることから、先般、JR東日本から感謝状をいただきました。
また、駅以外にも、地域の公園や道路の清掃活動を行っています。すると、自然に地域の方から「お疲れ様」「きれいになったね」などと声をかけていただけるようになりました。すると利用者もとても喜び、今では土曜日が待ち遠しいといった様子です。

職員が地域とのパイプ役に

私どもの法人では、この清掃活動以外にも、さまざまな地域の活動に参加しています。
例えば、農業の除草作業や田植えで使う育苗パレットの移動、清掃などです。これは、地域で農業に携わる方が高齢化しており、体力を要する作業を行うのが難しくなっているとのことでご相談いただいたものです。田植えの育苗パレットには水が張ってあり、運ぶとなると意外と重く、重労働です。利用者には運動になりますし、褒められることでやりがいを感じてもらうこともできました。
他にも、多機能型事業所で食品加工や部品組み立て、箱折りなどの作業も行っています。現在、工賃として24,000円くらいを支払うことができています。
また、イベントを通じた交流も積極的に行っています。地元の保育所と連携し、施設にある「芝生広場」でフットサルのミニゲームをしたり、祭りに参加したりしています。地元で開催する「さくら祭り」では、職員が実行委員として参加し、利用者とともに、仮装大会や、施設で作った野菜の販売などを行うことで、地域との交流を図っています。資料16の左下の写真は、さくら祭りのメイン行事である仮装大会の様子です。この祭りは、7年前に区長と実行委員が手弁当で始めたものです。2年前からは市から補助金がいただけるようになりました。

それから、5年ほど前から開催されているサンマまつりにも、職員が実行委員として参加しています。この祭りは、日本国際ボランティアセンターの事務局長が穴山町の出身で、東日本大震災の際、気仙沼市でボランティアを行ったことがご縁で始まったものです。何か一緒にできることはないかとの話から、気仙沼産のサンマを取り寄せ、穴山町で祭りを行うことになりました。焼きたてのサンマにご飯とみそ汁、漬物をつけて700円で販売し、利益はすべて気仙沼市に寄付しています。
また、先に述べた農業のお手伝いの他に、有休農耕地を買い取ったり、借り受けたりして、利用者の日中活動の場としても活用しています。現在、十数本の桃を栽培している土地では、夏の間に12,000〜13,000個ほどの桃を出荷しています。利用者には、無理のない範囲で桃に袋をかけるなどの作業をしてもらい、あとは、職員が朝から世話をしに行くなど、5年ほど継続しています。
他にも、韮崎市を拠点に社会貢献をする任意団体のお手伝い、地域の野菜や果物栽培のお手伝いなど、利用者が地域の中でいきいきと活動をすることができています。また、法人が主催する祭りで地域に評判なのが「地域ふれあい夏祭り」です。昨年で31回目を開催することができ、参加者も600名を超えるイベントとなっています。
こうした活動は、職員が地域と利用者とのパイプ役になっているからこそ生まれ、続いているのだと思います。地域で利用者の活動場所を確保するには、まず、職員が積極的に地域と関わることが大切なのです。

地域とスムーズな連携を行うために

私どもは、地域連携を進めるには、地域の特性を理解する活動が大切でその鍵となる「もの」「人」「情報」をうまくコーディネートするには、職員の手腕が問われると考えています(資料17)。

また、地域連携を推進するには、目的を明確にし、タイムスケジュールを含む実施過程を策定し、成果の適切な評価をすることが重要です。
福祉施設・事業所では、さまざまな活動が行われますが、内輪だけで完結してしまいがちです。地域に情報が伝わらず、お互いに名前しか知らないようでは、なかなか相手との関わりもできません。信頼関係を築くためには、顔を合わせ、直接、交流することが重要です。
私どもは顔が見える活動として行事の実行委員を担うだけでなく、活動報告やお知らせなどを掲載した機関誌『あなやま』を制作し、町内全500戸に直接手渡ししています。これも、利用者の活動しやすい環境づくりに一役買っていると思っています。

まとめ

地域の特性を理解し、積極的に関わっていくことは、職員の社会性を向上させることにもなります。それが利用者の社会進出を後押しすることにつながるのは、これまで申しあげてきたとおりです。職員と利用者、地域の方がお互いに理解し合える環境が整ったとき、はじめて有意義な地域連携を構築することができるのだと思います。