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福祉施設の実践事例

実践事例 詳細

地域と社会福祉法人との協働

種別高齢者施設
開催年2016
テーマ地域公益事業
地域貢献
地域と社会福祉法人との協働

社会福祉法人 六親会

はじめに

当法人では千葉県のモデル事業として、「施設のありかた研究会」を平成18年に設置しました。それ以来、地域拠点としてボランティアの受け入れなどを通じて地域との交流に取り組んできました。施設が地域に専門性などの機能を提供するだけでなく、地域と連携することによって施設への理解や支援を得ながら、地域住民参加による法人経営につなげることができます。
地域の拠点としての施設のあり方は、制度の中で施設がしなければいけないこと、制度以外で施設ができることを考えていく必要があります。

施設が地域にできること

施設が地域に何ができるのかを考えるプロセスが、 次のステップ1〜4(資料5)になります。

  • ステップ1「地域の拠点となることへの職員の理解と認識の共有」

まず、職員の意識の共有を図るため、職員対象のアンケート(資料6)を行いました。アンケートでは「地域に対してどれくらい目を向けているのか」「自身の仕事と関連付けて捉えているのか」を把握する意図がありました。
アンケートの結果、「施設外に目を向けられていない」という回答がほとんどでした。特に特養の職員は「施設が地域に対してどのような役割が果たせるかについて想像がつきにくい」という結果になりました。
この結果を踏まえ、職員が地域の状況について知ることから始めなければならないと感じ、職員に対する研修を実施しました。研修では、地域に存在する社会福祉施設の役割や使命などの意識付けを行いました。続いてプロジェクトチームを設置し、現在実施している地域貢献活動や地域との交流事業を精査し、地域における福祉課題の発掘を行いました。

  • ステップ2「取り組みが安定かつ効果的に実施できる体制の整備」

ステップ2では、地域住民や教育機関など、地域の方々に向けてアンケートを行いました。一般の方は、施設は「介護が必要になった時に初めて行くところ」「元気なうちはできれば行きたくないところ」といったイメージを持つ方が少なくなく、利用者以外の方が施設に関わる機会が少ない現状を確認しました。その一方で「実際に施設に来てみるとイメージが変わった」との意見も多くありました。また、世代間の「交流の場」としての機能や、ボランティアの育成・コーディネート機能、介護指導や相談機能が期待されていることもわかりました。
これらの結果から、施設を有意義に活用できる体制を整えなければならないと考え、地域運営協議会を法人主導で設置し、行政・社会福祉協議会・民生委員・老人クラブ・施設職員等でメンバーを構成し、施設と地域住民の話し合いの場づくりを行いました。

  • ステップ3「具体的事業の実践」

事業を実践するにあたり、資料7で挙げた目的が達成されることで、地域住民と職員との交流が図れ、 地域ニーズのさらなる発掘・把握につながります。また、地域住民の方と顔の見える関係づくりを目指していきます。

  • ステップ4「取り組みの評価と検証」

実践後、再び職員や地域の方にアンケート調査を行いました。事業実績と事業計画の改善をくり返しながら、少しずつ事業を軌道にのせていくことが重要になります。取り組みのプロセスは、PDCAサイクルを活用して実施しています(資料8)。

具体的事業の実践

地域における公益的な取り組みとして、生活困窮者自立支援法と日常生活支援総合事業(総合事業)に関わる部分を中心に具体的な事業を実践しました。その内容が資料9です。
生活困窮者自立支援法の中で、生活困窮家庭の子どもへの学習支援事業と生活困窮者就労訓練事業(いわゆる「中間的就労」)について取り組んでいます。中間的就労は、本格的な就労を目指していく中での準備段階として就労機会を提供します。就労支援担当者の支援のもと、資料10のような流れで行われています。
私たちの法人では、行政から中間的就労の認定は受けていませんが、業務を分解しワークシェアリングを行っています。職場適用援助者制度の活用や法人独自で就労支援担当者を配置し、就労支援のもとで障害者手帳を持っている方も一般就労として雇用しています。施設内の清掃やリネン交換のほか、利用者とのコミュニケーションなど、一人ひとりに合った業務内容を検討し、就労していただいています。
総合事業については、専門的なサービスを提供している事業所、地域関係団体や地域住民が協働し、地域すべての高齢者の包括的な支援のあり方を意識していくことが必要です。例えば、当法人は平成24年に通所介護事業所を駅前ショッピングモール内に開設し、いわゆる「買物難民」と言われる方々を支援しています。さらに、在宅療養支援診療所、訪問介護事業所、居宅介護支援事業所を同施設内に誘致し、他法人との連携のもとで地域包括ケアシステムの体制を構築し、地域ニーズに応えられるようにしました。

まとめ

今回、地域における公益的な取り組みを通じて、地域拠点としての新たな役割を考えることができました。
当初、地域ニーズを理解しておらず、施設が地域に 対してどのような役割が果たせるか想像がつきませんでした。しかし、地域住民の方々と時間をかけて顔の見える関係づくりを行ってきたことで地域の状況を知ることができ、このような活動につなげることができました。今後も地域の多様なニーズを把握できるように、地域福祉の拠点として地域の方々と協働していきたいと思います。