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福祉施設の実践事例

実践事例 詳細

特別支援学校通学児のための 支援「モーニングサポート」 について

法人資源を有効活用した 地域貢献事業
種別障害者施設
開催年2017
テーマ地域公益事業
地域貢献
特別支援学校通学児のための 支援「モーニングサポート」 について

社会福祉法人 東方会 障害者支援施設「瑠璃光苑」

特別支援学校通学児のための支援「モーニングサポート」

当法人は、佐賀県伊万里市に所在しています。今から22年前に重度の身体障害者施設「瑠璃光苑」を開設し、その後、障害福祉に関わるさまざまなサービスを提供するようになりました。「モーニングサポート」とは、特別支援学校通学児童の就学とその保護者の就労支援を目的としており、障害のあるお子さんを、保護者に代わって特別支援学校までお送りするサービスです。地域によってはすでに取り組まれている施設が多いかと思いますが、伊万里市のような地方においては、まだ十分に広がっているとはいえない事業です。まずは、当法人が「モーニングサポート」を始めたきっかけをお話させていただきます。2011年7月、地域の自立支援協議会に出席した職員から、次のような報告がありました。それは、「子どもを学校に送ると会社の始業時間に間に合わない」という、障害のあるお子さんを持つご家族からの訴えでした。伊万里市では、多くの企業が8時30分ごろに始業します。しかし、学校は8時30分以前では生徒の受け入れができないため、どうしても会社に遅れてしまうというわけです。この問題については、これまでも保護者の間から改善を求める声が寄せられていましたが、学校側としても早朝の受け入れに対応するのは難しいのが現状でした。また、学校専用のスクールバスが運行されていないことや、公共交通機関も朝夕は1時間に1本程度しか運行されていないという地域事情も問題の要因となっていました。そこで、当法人の相談支援事業所の職員が、行政や特別支援学校、保護者と調整を行い、この問題を解決するためのサービスを法人の事業計画に組み入れることにしたのです。こうして2012年4月から、地域の方々の要望に応えるべく、モーニングサポート事業を開始しました。では、具体的なサービス内容をご説明します。送迎先の特別支援学校と当施設は、直線にして約8キロ、車なら片道10分ほどの距離にあります。ご家族には、朝7時30分までに当施設にお子さんを連れてきていただきます。その後、学校に送り届けるまでの間がサービスの時間帯となります(資料①)。利用定員数は、送迎用の車両に乗車できる最大の人数である5名としました。現在はこの定員枠がいっぱいになっており、2名の利用待機者がいらっしゃいます。2017年6月の月間利用者数は延べ105名で、学校が開校している日は、毎日利用していただいている状況です(資料②)。利用料は月額3,000円、新規登録料として3,000円を設定しました。登録の更新料はいただきません。現在、正職員1名と、経験豊富なパート職員2名、ドライバー1名を配置しています。なお、車両にはドライブレコーダーを設置し、万が一事故などで利用者に不便をおかけすることがあっても、記録を残せるようにしています。次に、資料③で業務の流れをご紹介します。まず、朝7時には受け入れ準備のために、パート職員2名が居室の清掃やその日の利用者の確認を行います。そして、お子さんが来られたら順次、バイタルのチェックや日誌の記入、水分補給をします。食事の提供はしませんが、水分は当法人でサービスとして用意しています。その後、8時35分に出発するまでの約1時間は見守りを行います。そして、8時30分にお子さんを車両へ誘導し、乗車していただいたら、正職員1名も同乗したうえで出発します。その後、おおむね8時50分ごろに学校に到着し、担任に申し送りをするといった流れです。

資料①

資料②

資料③

法人の資源を活用する

次に、法人資源の有効活用についてご説明します。資料④をご覧ください。2枚の写真のうち、上の写真が、実際にお子さんの見守りをしている居室です。この部屋は、通常、日中一時支援事業で使用しています。また、比較的広い部屋であるため、複数のお子さんが遊びながら待機できる環境でもあります。そして、下の写真がモーニングサポートに利用しているリフト付きの送迎車両です。

資料④

モーニングサポートは、もともと法人としての地域貢献事業として始めたものですが、なるべく費用負担を軽減するため、法人が持ち合わせる物的資源と人的資源を最大限に有効活用することをめざしました。しかしながら、実際は法人の持ち出しとなる部分が非常に多く、今のところ、収入よりも支出の方が上回っている状況です。2011年から着手したこのモーニングサポートは、現在、地域になくてはならない事業となりました。当初は、地域の方の要望に応えようと始めたものでしたが、今では元気なお子さんたちと、安心して仕事にお出かけになるご家族の笑顔に、私どもの方が励まされる毎日です。当法人の理念は、利用者も職員も施設も、この地域に「なくてはならないもの」であるとの自覚と尊厳を持ち、なおかつ、地域のなかで空気のようにさりげない存在であることです。この理念に基づいた地域貢献事業がようやく実を結び、2017年4月からは、佐賀県内の全ての特別支援学校でスクールバスが運行されることになりました。ただし、なかには運行ルートが1本しかなく、発着時間も決まっているため、どうしても活用できないご家族も存在しています。また、車両にリフトが付いていないことや、介護ができるスタッフが同乗してないケースもあるなど、課題は少なくありません。当法人では、今後もこうした地域のニーズをくみ取り、積極的に課題を解決していきたいと考えています。