文字サイズ

福祉施設の実践事例

実践事例 詳細

障害者支援施設 誠光荘の災害への取り組み群馬県災害ネットワークとの連携

群馬県災害ネットワークとの連携
種別障害者施設
開催年2018
テーマ災害時の危機管理・BCP、復興
障害者支援施設 誠光荘の災害への取り組み群馬県災害ネットワークとの連携

社会福祉法人 誠光会
障害者支援施設 誠光荘

誠光荘を中心とした災害訓練を実施

当会は、群馬県渋川市で障害者支援施設 誠光荘、相談支援事業、居宅介護事業、ケアホーム、デイサービスを運営しています。誠光荘は昭和55年12月に開所し、現在は施設入所支援95名の施設となっています。 当施設の災害への取り組みとして、防災避難訓練、土砂災害想定避難訓練、夜間緊急連絡網、職員呼出訓練を行っています。 平成23年の東日本大震災時には、福島から利用者4名を受け入れました。これは、全国身体障害者施設協議会(以下、身障協)事務局から、栃木、群馬、埼玉で受け入れ可能な施設を探しているとの情報があったことから対応したものです。その後、5月には岩手県へ職員1名を17日間派遣しました。 平成28年3月、群馬県身体障害者施設協議会(以下、群身協)として「社会福祉施設の災害時における相互応援に関する基本協定書」に加入。同年11月には、県と県社協が中心になって行う「第1回 施設間連携図上訓練」に、翌年には2回めの同訓練を行い、そして、平成29年9月には、県と渋川市が主催する「群馬県総合防災訓練」に参加しました。平成30年6月には、県と渋川市が主催する「土砂災害防災避難確保計画支援」への取り組みも行いました。 また、群馬県および県社協で構成する「群馬県災害福祉支援ネットワーク」は、施設間連携と福祉専門職派遣DWATの2つを実施しており、群身協は両方に参加しています。 第1回の施設間連携図上訓練では、県と県社協が社会福祉総合センター内に事務局を置き、周辺3施設に職員が連絡を取り合う係として待機しました。そして、電話、FAX、メール、「Biz安否for docomo」を使って訓練を進めます。この「Biz安否for docomo」は、携帯電話やスマートフォン、パソコンから同時に複数の事業所が読み取り可能で、チェックやコメントの記入により、情報を簡単に送ることができるツールです(資料①)。さらに、災害想定カード、災害状況カードを使って刻々と変化する状況を報告しました。

資料①

また、群馬県総合防災訓練では、土砂災害を想定した避難訓練を当施設から生中継し、会場で映写を行いました。当施設は、建物の一部が土砂災害特別警戒区域に含まれているため、その部分から避難するための訓練となりました。土砂災害の訓練は火災による避難訓練と違い、ゆっくり時間をかけて進みます。土砂災害が起こる可能性のある場所から安全と思われる場所へ、利用者に声をかけながら避難の訓練をしました。 また、災害支援ネットワークへの参加で、災害時に有効なさまざまな通信手段を知ることができました。応援を求められたときに何ができるかを考えることや、障害者や高齢者など、種別ごとに完結できる体制作りの必要性を感じました。 何より、施設の中ですぐに取り組めることや、確保計画などにアドバイスをいただいたことは、全職員の更なる意識の向上につながったと考えています。図上訓練を何回も繰り返し、どこで災害が起きても臨機応変に手を差し伸べることが大切だと思います。 当施設では、年間を通して行う行事に数百人の来客があるため、地域とのつながりはできていると思いますが、情報共有の部分では、よりつながりを強固にする必要を感じています。

災害派遣福祉チームとしての活動

平成29年5月より、群身協の職員として、災害派遣福祉チームの「先遣隊」候補者の活動を開始しました。福祉専門職チームの派遣では、災害時に一定の配慮が必要な在宅の高齢者に支援を行います。一般家庭の多くが損壊するような災害が起き、避難所での生活を余儀なくされた場合、在宅要配慮者は十分な支援を受けられなくなります。また、支援の必要がなかった人も、避難所での生活で状態が悪化し、支援が必要になる可能性もあります。適切な支援につながる取り組みや、避難所の環境整備などが必要です。 先遣隊は、災害発生後、避難拠点への移動時期のおおむね3日間活動します。福祉ニーズの状況を速やかに把握し、本部に発信して次の支援につなげます。この際、ニーズの把握が極めて重要になるため、どのような災害であっても先遣隊を派遣します。介護支援専門職、社会福祉士、精神保健福祉士、事務職など4人程度が1~3日間活動します。 災害派遣福祉チームのもう1つの部隊である「支援隊」は、先遣隊からの報告に基づき、必要と判断された場合、一般避難所、福祉避難所などで支援先と連携して福祉サービスの提供や、避難者の廃用症候群の予防をします。社会福祉士、介護福祉士、保育士などからの必要な人数を集め、5日間程度活動します。 また、「DWAT」という災害派遣福祉チームがあります。DWATは、社会福祉士、介護福祉士などの専門職で構成され、被災地の福祉的な支援が必要な避難所への対応や、社会福祉施設などで適切な支援を行うためのスクリーニングを行います。その他に派遣されるのは、災害派遣医療チーム「DMAT」、災害派遣精神医療チーム「DPAT」、災害時健康危機管理支援チーム「DHEAT」です。 災害派遣福祉チーム先遣隊候補者の検討会は、平成30年3月、群馬DWATの登録研修まで進みました。今後、災害派遣福祉チーム員としてステップアップするために、登録研修や養成研修、スキルアップ研修を行い、災害時の活動だけではなく、平常時から専門性を生かした活動を目指していきます。 また、西日本豪雨の際は、群馬DWATとして岡山県の倉敷市立薗小学校に派遣されました。岡山県災害派遣福祉チームと一体となり、避難所の生活改善支援、福祉的目線での環境支援、福祉的な相談受付などを行いました。 期間は8月4日から14日までで、介護支援専門員、精神保健福祉士、介護福祉士、保育教諭など、13名が3班編成で活動しました。ラウンドでは岡山DWAT、高知県の保健師とチームを組みました。避難所に来られた住民の方たちは、毎日同じような服装をした福祉チーム員を見ており、同じ話をしているかもしれないため、話をするタイミングを工夫し、要観察者の情報交換をしながら相談事を聞き出しました(資料②③)。

資料②

資料③

群馬DWATのチームワークと、他チームとの連携のよさが今回の発見です。一人ひとりが次の質の高い支援につながることを意識して活動したため、ニーズの変化にも対応できました。 今後も研修を重ねてスキルアップできればと思います。また、当施設の活動を通してさまざまな提案を行い、地域とのつながりを強固なものできればと考えています。